老舗銭湯×スケートパーク!金魚湯 旦那・内木晴樹氏に訊く

最終更新: 2019年9月12日


江戸情緒が今でも残る町、栃木県栃木市。町の中心部を流れる巴波川(うずまがわ)を利用した材木貿易で栄えた町だ。川沿いには江戸明治を思わせる建物が建ち並び、栃木県が誇る観光地でもある。


休日にこの川沿いを歩いていると、ガタンガタンという不思議な音が聞こえてきた。それも明治創業の老舗銭湯「金魚湯」の裏からである。ちょっとした冒険気分で細い路地に入っていくと、なんとそこには大きなランプ(半円型のスケートボード遊具)があった。

銭湯の裏にある建物の1階がランプになっている

聞くとここは、「金魚湯ランプ」といい、知る人ぞ知る隠れ家スケートパークだそう。


興味を持った私は、後日銭湯の社長(旦那)でありパークオーナーの内木晴樹(ないきはるき)さんに話を伺わせてもらうことにした。

金魚湯の旦那・内木晴樹(ないきはるき)さん
愚痴を言える友達がほしかった。だから遊びに来てもらえるような場所を作ろうと。

-金魚湯の社長とスケートパークのオーナーだと伺っていますが、どんなことをされているんですか?


メインの仕事は金魚湯で、火起こし、薪割り、薪入れ、設備の管理とか、銭湯に関わること全般をやってます。その合間にスケートパークのオーナーとして、お客さんの相手、要望があれば先生もやるかな。


-薪でお湯(井戸水)を沸かすというので、かなりの体力仕事ですよね。そもそも銭湯で働くきっかけは?


嫁の実家がこの金魚湯なんだよね。


明治22年創業「金魚湯」

専門学校を卒業後、アパレルの販売員をしていて。中高生の女の子相手の販売で心が病んじゃった。俺には向いてないなって思った頃、勤務地が移動になって、その移動先の上司だったのが嫁。


付き合うようになって、金魚湯にも遊びに来たりしてたんだよね。そのうち「銭湯を継がないか」っていう話が出て。嫁のお父さんが早くに亡くなってたんで、人手不足だったんですよね。家を買ってあげるよって言われて「継ぐ継ぐ!」って(笑)。今だから笑い話ですけどね。


−実際来てみると大変だったとか。


家は底が抜けてるし、屋根も自分で直して、「話が違うじゃねーか」って思った。朝は8時から朝飯食べずに火起こしして、そのまま昼ご飯も食べずに薪を切ったりとか。家も結局買ってもらえないし、おこずかいもなし(笑)。当時の社長だったおじいちゃんとは喧嘩するし、過酷でした。


そんな生活、ストレスが溜まるじゃないですか。でも相談する友達もいない。だからまずは愚痴を言える友達がほしいと思ったんです。昔スケートボードをやってたんで、スケーターを探しに行ったりはしたけど、朝9時から夜11時まで働いてるからなかなか外に出る暇がない。じゃあ遊びに来てもらえる場所を作ろうと、最初のランプを作った。ランプを作ったことなんてないから、見よう見まねで作りました。仕事ももちろん必死だったけど、同じく友達を作るのにも必死で。こういうのを作れば人が来てくれるかなって。それが今から20年以上前かな。

夏場は30分に1回薪を入れる。日によってお湯の温度が変わるのが薪風呂の醍醐味。
もう自分のためのスケートボードは一区切り。これからは子ども達に技術を教えたい。

−当時の社長だったおじいちゃんはどう思ってたんでしょう?


おじいちゃんはランプを作ることに反対で、解体業者を呼ばれて撤去されたりもしました。そんなおじいちゃんも「よろしくな」って言って亡くなったので、最後は認めてくれたのかな。けど、おじいちゃんが死んじゃったことで俺はもっと外に出られなくなった。昔は「薪取ってくるね」って嘘ついてスケートボードの大会に出たり(笑)、ごまかしごまかしやってたけど、俺がいなかったら薪を入れる人もいない。だからもう自分のためのスケートボードはいったん置いておこうって。


その頃ちょうど長女が生まれて、自分の子ども達にスケートボードを教えたいって思うようになった。次女を教えるようになってから、ここの噂を聞きつけて子どもに教えてほしいっていう人が集まってくるようになって、定期的にスケートボード教室を始めることになったんだよね。

元衣装部屋のパークで滑る息子のそう君(9才)

最初は1階にあるランプでやってたけど、もっとしっかり教えたいと思って、当時もう使ってなかった2階の衣装部屋と宴会場をパークに改装しました。

カラオケなどができる宴会場だった
ある意味スケボーがあったおかげで、今は成り立ってるんじゃないかなって。

うちに来てるのは子ども達だけじゃなくて、ローカル達もいる。「お風呂の配管が壊れたみたいだから行ってくるわ」って言うと、偶然ローカルの中に配管屋さんがいて、直し方を教えてくれたり、大工さんがいたりとか、金魚湯にとってすごいプラスになってきた。水槽が壊れたらみんなで直したり、俺がスケートで怪我した時もみんなが代わりに風呂掃除やってくれたり。

映画の撮影でも使用された浴場。奥にあるのは本物の金魚が泳ぐ水槽

若い人がいると入りやすいのか、家族連れも来てくれるようになった。お風呂入った後に、嫁がやってる「こうしんの店」でやきそば食べていってくれたりとか。俺がここに来た頃は、お年寄りの方ばっかりだったんだけど、今は小さな赤ちゃんから中高生、若いカップルなんかも来てくれるようになった。ある意味スケートボードがあったおかげで、今は成り立ってるんじゃないかなって。


内木さんに訊く! 3つの質問

人生を変えた出来事は?


自営業をやることになったこと。人に指示されるのが好きで、指示されたことをそれ以上にやって、褒められるのが好き。だから指示することなんて考えてなくて。だからそこが転機。今でも誰かに上に立ってほしいって思うよ(笑)。


毎日をハッピーに過ごすために心がけていることは?


俺はみんなが楽しんでくれるのが嬉しい。周りが笑ってくれればありがたい。まずはなるべく自分が笑うようにしてる。作り笑いでもいいから笑ってたらいいと思う。


大切にしてる格言はある?


「やることやれば、あとは自由」




インタビュー:Miho Oashi

撮影:Kana Fusegi

玉川の湯(金魚湯)

0282-22-1865

11:00〜23:00

水曜定休

入浴料:大人350円(中学生以上)、中人150円(小学生以上)、小人80円(6才未満)

ランプ使用料:700円(年齢問わず)

(消費税増税に伴い、料金変更の可能性があります。詳しくはお問い合わせください)





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