コロナウイルスが世界を侵食しつつあった2月の台湾旅行の話

今年の2月16日から23日まで、台湾にいた。

コロナが世界を震撼させるその直前、台北・台南と旅行をして感じたことを書こうと思う。


日本ではその頃「ダイヤモンドプリンセス号」が話題になっていて、うちら本当に台湾行けんのか? とヒヤヒヤしていた。私と彼は7ヶ月ぶりに日本で再会し、栃木、東京、大阪、台湾と旅行する予定だったのだ。


台湾=中国という先入観からか、多くの人に「(行くのは)やめた方がいい」と言われてた。確かに台湾の正式名称は中華民国だし、北京語を話すし、今の台湾は中国の国共内戦で敗れた中国国民党の蒋介石らによって形成されたけど、台湾は中国のようでそうじゃない。し、多くの若い人らは自分を「中国人」とは思ってなくて、「台湾人」と思ってる。それにそもそもコロナになる前から大陸から台湾への個人旅行は禁止されている。


というので、まだ国からも渡航禁止令が出てなかったし、飛行機も飛んでいたので、強行突破することにしたのだ。(のちに己の愚かさを知るんだけど)


関空から向かったが、関空も台北の桃園国際空港もどちらも人がまばらだった。特に桃園空港では、すでにピリピリした雰囲気が立ち込めていて、マスクをしないなんてありえない! って感じだった。(なのにボーイフレンドは鼻水が止まらなくて気まずかった)

お気に入りのクラフトビールバー「Driftwood 西門町」では、念入りな体温チェック。

家の近所にナイスな雰囲気のクラフトビールバーを見つけて何度か通った。台湾はクラフトビールが盛んで、おしゃれなレストランとかカフェ、バーでは必ず見かけた。私が好きだったのは「臺虎精釀 Taihu Brewing」というメーカーのビールで、このバーはその直営店。


入店前に必ず手を消毒しなくちゃいけなくて、席に着いたらまずは全員体温チェック。店員の男の子がおでこにピピッとする体温計で測ってくれる。ビールが頼めるのはそれから。こんなことを2月の中旬にはやってた台湾って本当にすごい。


そもそも本当に初期の頃から、マスクを政府が買い上げて、マスクの値段が釣り上がらないようにして、国民に平等にマスクが行き届くようにしているって、本当に素晴らしすぎない? ちっちゃい布マスクを1世帯に2枚配ってる国とは訳が違うよな〜。


それから、行きたかった茶藝館「小慢(シャオマン)」にも行くことができた。

京都にも姉妹店を構える台北の茶藝館「小慢(シャオマン)」

小慢は静かな住宅街にポツンとあって、パッと見は普通の一軒家。でも扉を開けると、そこは別世界。しっとりした大人の空間が広がっている。茶葉はもちろんだけど、陶器なども売られていて、そこはかとなく漂う美術館のような雰囲気。働いている人も、リネンのエプロンをさらりと身に付けて、映画の中のように美しいのである。


席に着くと、このリネンのエプロンを着た美しい台湾人の女性がお茶を入れてくれた。彼女は開口一番こう言った。「日本人はコロナウイルスが怖くないの?」


「どうして?」と聞くと、「街を見渡すと日本人ばっかり。あなたも日本人。台湾人はみんなコロナウイルスが怖いと思ってる。台湾人だったらこの時期に旅行に行かない」とはっきりと言った。グサッときた。


確かにそうなのだ。街を見渡せば、自分含め日本人ばっかり。はっきり言って、まさかこんなにいるとは思わなかった。台湾人からしたら、「おい、こんなときに俺の国にくんじゃねーよ!」に違いない。私は猛省すべきなのだ。


それから、彼の繋がりで、現代アーティストや音楽家、研究者、翻訳家、ジャーナリストなど同世代の面白い台湾人が暮らす家にも遊びに行った。

絵や詩を書く人、翻訳家、音楽家など才能ある同世代の友人。何人かは母国に戻れなくなった

彼らは3LDKほどのアパートに一緒に暮らしている。中には香港から車の免許を取りにきたら、そのまま帰れなくなったという香港人の女の子もいた。

北京で大学院に通っている龍は、コロナ検査済

日本語、北京語、英語が堪能な龍は、北京の大学院で中国の哲学について学ぶ大学院生兼ミュージシャン。高円寺にいそうな雰囲気。


ちなみに彼ももちろん北京に帰れなくなったし、大学自体すでに封鎖していた。そんな彼自身もコロナ疑惑がかけられていて、この日の数日前に陰性の検査結果が出たばかりだった。


それでも彼らは粛々と自分のやるべきことをやり、「こうなったものは仕方ない」と現状を受け入れているように思えた。


その後、台南という台北から新幹線で2時間くらいの町にも行った。

台南は台北よりもずっとあったかくて、ゆったりしていた。それ故か、コロナへの危機感も低いように思えた。それでも宿泊したホテルのレセプションでは、手の消毒から始まるのが常だった。台湾では手を消毒しないことには何も始まらないのだ。


最終日、恋人が台湾の「延聲音樂 - Continue Music Studio」という地下のライブハウスのようなところでパフォーマンスを行うことになっていた。3日間に渡り開催する音楽イベントで、彼は最終日の出番だった。21時頃現場につくと、おしゃれをしたキッズらが道路に溢れてすごい賑わいようだった。正直「まじか……」と思った。密閉空間で、人数は軽く200人超えてるし、絶対やばい。

地下のライブハウス。人うじゃうじゃいる

でもやっぱりここは台湾だった。消毒をシュッシュするためだけに働く人がいたのだ。彼の楽器や機材を置きに別室に行ったら、そこにはシュッシュを片手に見張っている女の子が。容赦無く荷物にビシャビシャと吹き付けていく。ラップトップとか入ってたら大変。


もちろん入り口でも手にシュッシュしないと入れない。外からきた人の荷物には、憎い奴をこらしめるくらいのアルコールをシュッシュ。これを見て、なんだか安心して楽しむことができた。ありがとう台湾。


DIYな空間に音楽好きな若い人々が集まる

以上、私が2月中旬に見た台湾の一部である。

ちなみに、日本に帰国した次の日の24日には、台湾衛生当局から日本人観光客の「公共の場」出入り自粛要請が出された。


台湾から帰ってきて、日本ののんびり具合には正直衝撃を受けた。外出自粛要請が出された今でも、レストラン前に“必ず”アルコール消毒が置いてあったりはしないし、アルコールをシュッシュするためだけに働く人もいない。マスクの値段は釣り上がったり、急落したりする。噂のアベノマスクは5月現在まだ届いてない。10万円はいつもらえるんだろう。近所のお店が潰れた。


この国(政府)がコロナとどう対峙していくか、これからもしっかり見ていきたいと思う。











76回の閲覧