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アメリカの選挙と日本の外国人差別



ミネアポリスでの事件があって、その後すぐに#BlackLivesMatterが起きて、私はあれ以来ずっと、大切な友人でアフリカ系アメリカ人のマーセルと話をしていた。


彼はセネガル人(といえどいろいろ血が混ざってる)の両親のもと、ニューヨークで生まれて、その後はパリ、コートジボワール、ベルリン、カリフォルニアと世界を転々としてきた。セネガルは国が貧しいので、散り散りにならざるを得ないのだという。だから彼の兄弟や親戚も、パリ、ニューヨーク、ベルリン、ダカール、と世界中に散らばっていて、家族はみんな英語、フランス語を混えて話す。彼はドイツ語、スペイン語、ウォロフ語も話せる。


彼の見た目は濃い茶色の肌に黒く縮れたドレッドヘア。遠くにいてもすぐにわかる。ドクターマーチンを履いて遠目にはどこかのヒップスターさながらだけれど、彼はサイエンティストだ。


その日はBlack Tuesdayで、インスタグラムが黒に染まった日。「今日はどこも画面が真っ黒だったね」と言うと、彼は「オンラインで投稿して、何か良いことをしたとその気になっているだけ。でも実際には彼らは何も問題を解決していない」と言った。


「僕はこういうことに冷笑的。黒い画面を投稿する多くのアメリカ人は、実際には選挙に行かない。だから警察の幹部は変わらないし、上院も同じ、州の弁護士(司法制度を担当し、警察官を逮捕するかどうかを決定する)、大統領も同じまま。こんなことは、自分自身を気持ち良くするためだけのでたらめだ」


それから彼は、アメリカの選挙制についても教えてくれた。


「重要なことに、投票の難しさがある。貧しい人々にとっては投票へ行くことが困難だ。投票日は休日や週末などではないし、もし働いていたら選挙に行けない。それにもし貧しくてお金が必要なら、仕事を休んでまで投票に行こうとは思わない。それに投票会場自体少なく、もし車を持っていないならそこへ行くことも難しい。いくつかの州では、免許証を見せなくちゃいけない。それだとやっぱり貧しい人にとってハードルが高い。それに多くの州では、刑務所への入所経験がある場合、投票ができない。アメリカでは、微量の大麻を持っているとかそんな馬鹿げた理由で簡単に逮捕されるから、刑務所に放り込まれる人口の割合が高い。だけど例えば大麻で逮捕されるのはいつも貧しい人で、裕福な白人は許される。だからまた貧しい人は投票できない」


彼は今東京に住んでいて、日本には丸6年住んでいる。

私は、「日本人からの差別はあった?」と聞いてみた。


「いつもだよ(笑)。地方でアパートを探していたとき、誰もアパートを貸してくれようとはしなかったし。僕と韓国人の友達でヘアサロンに行った時、カットするのは韓国人の友達だったんだけど、僕の方が最初に店に入ったんだ。そしたら『Sorry No service』って変な英語で言われた。でもカットするのが韓国人の友達だってわかったら、急にOKになった。日本でクラブに行くと大麻持ってる?って必ず聞かれるし、レゲエとヒップホップが好きっていう日本人女性が僕のところに来る。多分ドレッドだからって理由だけ。何かサポートが必要で電話をかけて、英語話せますか?って聞くとすぐに電話を切られる。電車でベロベロに酔ったサラリーマンに『糞外国人』って日本語で言われたこともある。なんの理由もないのに警察に呼び止められるとか、他にもたくさん」


それからいつも彼が言っているのが、「僕ら日本に住む外国人にとって、カルロス・ゴーンは英雄だよ(笑)。彼は人質システムからなんとか脱出し、世界に日本の悪い側面を公表した」。


彼はこの夏、仕事の都合でデンマークへ引っ越す。社会が成熟した北欧。彼はまた日本に戻りたいと思うだろうか。


他者を認めることができなければ、世界は二極化するしかない。左とか右とか、黒とか白とか、西とか東とか。SNSの出現で自分の立場を表明することが簡単になったけれど、新しい亀裂を生むのも簡単になったと思う。私はナショナリストな右翼的思想は好きではないけれど、それでも全体が同じ意見を持つことは不可能だし、そんな世界はつまらないと思う。いろんな肌の色とか、目の色とか、育った環境とか、宗教とか、政治的意見とか、性的指向とか、その人の持つキャラクターとか、どれも大切に、認め合って共存できる世界になってほしい。

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